前田普羅<60>(2025年10月)

< 普羅60 前田普羅の「 恋心 」>

 普羅には「恋心」を詠んだ句がありました。主宰中坪達哉の著書『前田普羅 その求道の詩魂』から紹介します。

(抜粋p110) (昭和23年3月の作)

  くりくりと君がたばねる韮の玉

  窓前に韮の闇あり奈良遠し

 「奈良遠し」の奈良は奥田あつ子さんのいる大和関屋であり、「君がたばねる」の君とは奥田あつ子さんその人であろう。同年の2月には普羅の「奥田あつ子さんよりの文通ふつりと絶ゆ、暗き想ひす」との記述も残っている。作品の上では、韮をたばねる君がいなくなった韮畑の闇。そして韮の独特の強い匂いは普羅の狂おしき心を象徴する。連句仕立てのあつ子恋である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です