<草紙40>「 紅葉とマウンテンバイク 」(富南辛夷句会便り) 

 数年ぶりに紅葉の称名滝へ車を駆った。渋滞を避けようと朝の出発となったが、朝の日に映えた峡谷の紅葉は期待を上回るものがあった。毎回、称名滝の迫力には圧倒されるが、今年はさらに、まだ明け切らぬ山影を落ちる滝の神々しさや、紅葉にぶつかるように流れ落ちる真っ白な滝の美しさを見ることができたのは幸運だった。この写真は折を見て辛夷ホームページ「四季だより」に投稿したいと思っている。

 また、道中に出会ったマウンテンバイクがとても印象的だった。総身で風を切り、紅葉の山道を走る姿は爽やかでうらやましくもあった。滝見茶屋で聞いたところによれば、立山町観光協会で「サイクルツーリズム」推進のため、坂道でも快適に利用できる電動アシスト付きマウンテンバイクのレンタルを立山駅(富山地鉄)前の案内所で始めたという。私も日頃の散歩を強化して体をつくり、挑戦してみたいと思った。

 さて、今月の投句の季語は、紅葉、照葉、月、秋の蛇、新蕎麦、柿、通草、大根、銀杏、狐、落葉、黃落、枇杷の花、雪吊り、小春、冬耕、師走などと多彩だった。11月のこの地域は、秋晴に冠雪の立山を仰ぎ、紅葉に包まれた穏やかな山里となる。句会では、そんな自然の中の生活の句を皆で楽しむことができた。

 投句のあった季語に合わせて前田普羅の句を2句。

  いつまでも夕日漂ふ小春かな

  美しき栗鼠の歯形や一つ栗

                           康裕


<草紙39>「『前田普羅 季語別句集』を手にして」(富南辛夷句会便り) 

 10月9日に令和4年度『辛夷』年次俳句大会が富山市内の電気ビルで開催され、会場で辛夷百周年記念事業として編纂された『前田普羅 季語別句集』が発売された。手にされた富南辛夷句会の皆さんの感想は、片手にのるサイズで使い良さそう、月別に季語が組まれていて読みやすい、活字が読みやすい、手元において使いたいなど。いずれも、編纂のねらいどおりの感想で、編纂委員の私としても、とても嬉しかった。日頃の作句に活用していただきたい。

 さて、今月の投句の季語は、芒、紅葉、コスモス、間引菜、新米、柿、朝顔、月、秋夜長、身に沁む、冬隣、鰯雲、美術展覧会、松手入れ、秋麗などと多彩だった。

 句会の中で、近くの大学キャンパスの除草対策に導入された山羊の句が話題となった。地元紙紹介記事や大学ホームページによると、除草をすることで、清々しい空間を維持するだけでなく、病害虫や野生動物の侵入も防ぐことにつながるとのことだ。大学のSDGs推進サークルが除草量の測定を行い、除草効率を明らかにするとしているのは、いかにも大学キャンパスらしい。

 来る文化の日には「公民館作品展」が開催され、句会の皆さんが出品する。句会後、それぞれ自分の秀句を色紙に墨書してきたものを額装した。当日は、秋晴に冠雪の立山を仰ぐ、爽やかで穏やかな一日であれと願っている。

 投句のあった季語に合わせて前田普羅の句を2句。

立山の雨にほごるる芒かな

コスモスの倒れて花を上げにけり

康裕

※解る(ほごる・ほぐる)                     


<草紙38>「茗荷 」(富南辛夷句会便り) 

 富山市の南東部(旧大山町)では、7月から9月にかけて茗荷が採れる。今も各家庭で栽培され、味噌汁の具材や薬味、味噌漬け、甘酢漬けなど、さまざまな料理に重宝されている。特に小佐波地区で採れる茗荷は、富山県を代表する伝統野菜だ。鮮やかなピンク色をしており、香りがよく、シャキシャキとした食感が特徴。この茗荷を使った伝統料理の茗荷寿しは、祭事の際のご馳走だ。炊きたてのご飯で作った酢飯に、茗荷と鱒のほぐし身を混ぜ合わせ、できたてを茶碗によそって食べる。その後、手軽に食べられる笹に包んだ押し寿しの『みょうが寿し』が生み出され、ハレの日以外にも食されている。

 ところで、歳時記では、茗荷を季語としたものに「茗荷の子」「茗荷の花」がある。「茗荷の子」は地下茎から頭を出す赤紫色の花穂。その花穂が淡黄色の花をつけると「茗荷の花」。一般には「茗荷の子」のことを茗荷と呼んでいる。

 さて、投句の季語は、台風、稲刈、秋刀魚、秋蚊、蟋蟀、虫、曼珠沙華、秋茗荷、花梨の実、落鮎、熊棚など。この中の「熊棚(熊の棚)」だが、「熊栗架を搔く(くまくりだなをかく)」の傍題で、「栗棚」「熊の栗棚」もある。熊が木に登り、一つところに坐って木の実を毟って食べた跡だ。その時の、熊が枝を折って敷き重ねた座布団のようなものを頭上に見るのは、興味深くもあるが怖く、危険だ。山中でないと見られない珍しいものだが、今年は、里山に足を踏み入れると、あちこちに見られるという。もう熊が近くまで来ている。今年の山の木の実の成り具合が心配だ。

 投句のあった季語に合わせて前田普羅の句を二句。

  煮えあがる月の竈の茗荷汁

  親子して一握りづつ花茗荷

康裕