<草紙20>白鼻心(はくびしん)(富南辛夷句会便り)

 7月の句会では、梅雨、蚊帳、アカシアの花、日焼け止め、大蛾、クレマチス、あめんぼう、竹の子、白靴、夏手袋、空蝉などの多彩な夏と、西瓜、朝顔などの秋が顔を覗かせていた。コロナ禍の外出自粛のためか、身ほとりの句材が多い。出句の中に「白鼻心」が登場した。この句会では、初めてのように思う。白鼻心は、暗がりで見ると狸かと思うが、ジャコウネコ科で夜行性。名前は鼻筋に白いラインが入っているのが由来。この句会の上滝地区の山手では十年ほど前から、ぽつぽつとトウモロコシ、西瓜などの被害を耳にしていた。本来は山の木の上で生活するようだが、最近は廃屋、寺社の屋根裏などに侵入し、棲み着く話も多く聞く。

 さて、句に登場した白鼻心は、西瓜の食べごろを見事に嗅ぎ当てたとの句。「いよいよ明日収穫」と思っていたその夜に被害にあった。白鼻心は、食い散らかすことなくきれいに食べて、満腹になれば残して行くという。被害に遭った作者は「おいしいと綺麗に食べてくれれば、怒りはあるものの、まあ許せるかな」とのこと。一つだけ良いことがあったという。食べ残した西瓜に大きな甲虫がいくつも来ていて、お孫さんが大喜びしたとか。ここ上滝地区の畑は、猿害は常態化し、次に熊が加わり、続いて白鼻心が加わった。野生動物との共生を考える時期なのだろう。

康裕


<草紙19> 大蛾

 猛暑日が続いている。畑仕事を終えると野良着は絞れば滴るほどの汗みどろだ。すぐに洗濯して外の軒下に干す。翌朝、すっかり乾いた野良着を竿から外して、また着て畑へ、という繰り返し。ある朝、二つ折にして干したズボンを竿から引き下ろそうとすると、二つ折になったその隙間に、何やら薄茶のものが着いている。よく見ると、大蛾が張り付いている。払うと大蛾はどこかへ飛んで行ったが、まだ薄茶のものが残っている。大蛾の卵だった。どうやら産卵したばかりだったようだ。

 ここで、私の頭に過ったのが、「蛾の入りし袖におどろく宿浴衣」(前田普羅『春寒浅間山』所収)。この句を読んだ時は、たまたま、蛾が浴衣の袖に潜り込んだのだろうと軽く考えていた。が、この朝の出来事に、私は「もしや」と気が付いた。「普羅の浴衣も、宿の人が洗濯して外に干しておいたのだ。その間に、蛾が産卵に恰好の場所として袖の隙間に入り込んだに違いない」と。私の干したズボンの隙間に身を隠すように産卵していた大蛾のように。

 急に前田普羅が身近に思われてきた。折しも辛夷創刊百周年を2024年に控えている。初代主宰前田普羅に「しっかりと鑑賞せよ」とお叱りをいただいた心持ちである。

康裕


<草紙18>柘榴の花、その後

 柘榴の花(のガク)の、「その後」を公園に見に行ってきました。たくさんの方が、辛夷草紙16「タコウィンナー」と「四季だより(夏)」を見てくださって、「その後」が気になるご様子。ということで、しっかり写真を撮ってきましたよ。タコウィンナーの頭のところがだいぶ膨らんでいました。赤い色はとれていましたが、タコウィンナーの足はしっかり残っていました。これからどうなっていくのでしょう。ますます見たくなってきました。高いところに12個ほど実になっていましたが、まだタコウィンナー姿のものも残っていました。近づいている台風が心配ですが、「みんな頑張って!!」。

たこちゃんHiro