辛夷草紙<74>(令和7年7月)
<草紙74> 「有峰『俳句に親しむ会』に参加」(富南辛夷句会便り)
6月29日、今年の吟行地は有峰ダム湖に突き出ている砥谷半島。森の中の遊歩道は、水楢や山毛欅の木洩れ日が心地よく、蝦夷春蝉が今を盛りと鳴いていた。もちろんダム湖をかこむ山々の緑は言うまでもなくまぶしい。
先の富南辛夷句会で中坪主宰が、吟行に臨む心がけとして「心を無にし、五感を信じて自然(物)を観察することです。そうすると自然の方から語りかけてきます。句作を急ぐと表面だけしか見えません」と教えて下さった。これまでも、現地で、五感に触れたものを詠んできたつもりだったが、今一つしっくりこなかった。自然の方からの語りかけを待ちきれなかったのだろう。そこで、今回は「五感を信じ、句作を急がずに」と心に決め、遊歩道を進み、立ち休み、山毛欅大樹に顔を寄せていると、陰から黒揚羽がふっと現れた。黒揚羽が授けてくれた一句。
立ち休む山毛欅の陰より黒揚羽 康裕
さて、句会は、茂り、蛇、蜥蜴、虹、半夏生、百合、合歓の花、日傘、青葡萄、ハンカチ―フ、夏休、極暑など、夏の暮らしの身近な季語が並んだ。
投句のあった季語に合わせて『前田普羅 季語別句集』より3句。
帰らめと目覚むる夜半の百合匂ふ
神通の濁りうづまき合歓垂るる
西空にうつるものなき大暑かな
康裕
※富山県農林水産公社主催 有峰『俳句に親しむ会』
講師 富山県俳句連盟会長 中坪 達哉