前田普羅<48>(2024年10月)

< 普羅48 前田普羅と「鰤網」④ >

 「鰤網」①②③と、能登の海や鰤漁への普羅の思いを紹介してきましたが、今回は、富山を離れた普羅の最晩年の心情を鰤の句に読み取った主宰中坪達哉の鑑賞を、その著書『前田普羅 その求道の詩魂』より紹介します。

(抜粋p113) 東海の椿真紅に鰤来る

      鰤網を揚げれば楠の落葉かな 

 普羅は亡くなる昭和29年に、鰤の連作とおぼしき8句を残している。が、「椿真紅に」、「楠の落葉」とあるように冬季ではない。その年の立秋に没する普羅である。東海の春鰤を詠むが、普羅のこころには、冬の氷見の鰤があったのではなかろうか。句中の「椿」や「楠」は真鶴岬や伊豆でのものだが、かつて氷見海岸でよく見た、対馬暖流の影響を受けてよく茂った「椿」や「楠」をも思い起こしていたことであろう。

※東海……東海地方、 真鶴岬……神奈川県真鶴半島の先端

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