辛夷草紙<63>(令和6年8月~9月)

<草紙63>「 秋耕 」(富南辛夷句会便り)

 例年8月のお盆を過ぎると、収穫を終えた茄子やトマト、胡瓜、ピーマンなどを抜いて土を打ち返す。しかし今年の衰えを知らぬ猛暑に堅くなった土を打ち返すのはきつい作業だった。ミニ耕耘機を使って耕すが、畝作りは鍬を使って一振りずつの作業だ。ひと息入れるときには曲げていた腰をゆっくり反らし、立山連峰を仰ぐ。しばし、山々と語り、再び鍬を持つ。どうにか畝ができると大根蒔きだ。しかしまた、とんでもなくスピードの遅い台風のため大根を蒔くタイミングにも悩み、いよいよ異常気象が身近に迫ってきていることを実感した。

 8月の句会は都合により9月半ばの開催となった。そのため投句のあった季語は、梅雨明、炎暑、暑し、蝉、立秋、盂蘭盆、迎火、墓参り、残暑などで、夏から秋へと季節の移ろいの見られるものとなった。

 投句のあった季語に合わせて『前田普羅 季語別句集』より3句。

  秋や来る終に淋しさにも慣れず

  迎火のひとときこがす芦荻(ろてき)かな

  故郷の残暑に帰りきたりしか

                       康裕