主宰近詠(令和6年10月号)

蛇 の 衣 

中坪 達哉

何かある今宵は火取虫の来ず
真夜中の匂ひとなりぬ夏木立
にはたづみ今こそ泳げ蝸牛
覗かねばならぬ太さや蛇の衣
帰りには長くなりをり蛇の衣
蛇を見ぬうちに荒れ庭突つ切つて
虫干の衣裳巡れば迷路めく
十ほどの日傘過ぎ行き茶房出づ
  普羅忌 二上霊園普羅塚
片雲も白極めんと立秋忌
存分に日を吸ふことも立秋忌