辛夷草紙<6>(令和3年1月)

<草紙6>すてきな富山弁「空に乗る」 

 温暖化が言われ出す前の、昔の雪の暮しを数人の方に伺う機会があった。

 雪がたくさん降り積もる富山の冬でも、時折の雪晴れがある。朝、放射冷却で冷え込むと、雪が凍って雪の上を歩けたそうだ。だから学校へは近道して田圃の雪の上を一直線に進んで登校したという。あることを期待して……。学校に着くと先生たちが相談していて、子供たちに外で遊んでいいという校外学習扱いとなったとか。長らく外で遊べなかった子供たちは大喜び。

 この凍った雪の上を歩いていくことを富山の人は「空に乗る」と言っていたと教えていただいた。なんという美しい表現だろう。地域によっては「凍みに乗る」「凍み乗り」とも言っていたそうだ。圧雪したスキー場の雪の上を歩くのとは全く違うのだ。油断すれば、ごぼっと(ずぼっと)雪に足が沈んで腰まで雪の中。それもまた笑い合い、雪からの脱出も助け合って楽しんでいたという。雪上サッカーなどはボールを追うというよりわざと転げまわっていたとか。時に先生を先頭に小さな遠足みたいに1㎞近く歩くことがあったとも。凍雪の硬さと頼りなさ、宙に浮かんでいるかのようなふわふわ感、久しぶりの太陽の輝き、子供たちの歓声が聞こえるようだ。また機会があれば昔の雪の暮しの話をお聞ききしたいものである。

            康佐