主宰近詠(令和2年11月号)

雨音に眠たし (有峰の森)

中坪達哉

  西  谷  川 二句
岩を打ちいよいよ秋の水となる
名人の岩魚を返す水の音
日暮までもう一歩き真弓の実
折れ枝を踏み行く音も秋のもの
  マーキングした蝶を放つ
指先に浅葱斑の色移る
雨の中九月のあをにみづうみは
雨音も称名めくや森の秋
雨音に眠たし森の秋深む
雨音は打ち消し合ひて秋あざみ
雨音の小止みに霧を待つばかり