俳句大会報告(令和2年度)

令和2年度辛夷三賞

◎辛夷賞  明官 雅子

喉飴をガリリと砕く寒さかな
コーヒー豆挽く手応へも春めけり
しやぼん玉飛ばして雲と話さうか
風車泣く子をあやす風の色
ガーベラの一重の黄色八重の白

◎辛夷賞  二俣れい子

風鈴の雨にも慣れし音色かな
夏座敷花のなき日は草活けて
帰り来て旅の日数の落葉踏む
裏口に住まひのあかり虫時雨
初つばめ畑の夫を捜すかに

◎衆山皆響賞 平井 弘美

草取り女明日開園と腰伸ばす
水撒きて大地の割目ふさぎけり
目の合へば蝶をこぼして枝の鵙
薄氷の半月を割り耳鳴りす
窓若葉鏡の吾とリハビリを

◎衆山皆響賞 中島 平太

流灯を追うてみたるも三歩ほど
書き写す予定数多や新日記
今しばし白鳥を待つ日照雨かな
駒返る草や伏せたる舟に座し
マスクしてネクタイ試着夕薄暑

◎奨励賞  金山 千鳥

自転車の異国語過ぐや風薫る
満天星に始まる庭の秋の色
活き活きと道のありけり大枯野
抜き足の差す場所探す春の泥
疫禍記す新聞括り四月尽

◎奨励賞  水上 玲子

ひとり言増えて厨のなすきうり
向日葵の向き様々に子らを見ず
筆洗ふ立冬の水淙々と
一日の温もり残る落葉掃く
寄鍋や湯気の向かうの幼少期

◎年次大会入賞作品  中坪達哉主宰選

天位体臭も薬のにほひ梅雨深し村田あさ女
地位大日岳へ青攻め上る立夏かな岡田 康裕
伐られたる夏木何の木株撫でて井上すい子
人位リハビリも笑ひ合ふ友ゐて涼し平井 弘美
父の日や母の好みし菓子も添へ石黒 順子
住み古りてわが田のごとき青田風二俣れい子
特選夕影を追ひ一心に草むしる杉本 恵子
甚平の経読む声に力あり今井 久雄
納戸から風取り合ひし扇風機木谷 美以
夏空へ確と踏み出す眉も濃く野村 邦翠
窓辺まで雀来てをり明易し吉野 恭子
白玉やたわひなきこと言ひ合ひて田村ゆり子
外灯を消して暫くほうたると平木美枝子
三伏の箒目著き的場かな小澤 美子
湯殿へは瀬音づたひに河鹿宿野中多佳子
午睡へとテレビの音の心地よく北見美智子