辛夷草紙<68>(令和7年2月)
<草紙68>「 厨の窓 」(富南辛夷句会便り)
我が家のリフォームの折に、厨の東の窓を思い切り大きくした。立山連峰からの日の出を四季にわたって見たかったからだ。日の昇る場所は日ごとにと言ってよいほど稜線を動く。今はまだ浄土山あたりだが、これから春、夏と剱岳方面へ日々動いていくのがとても楽しみだ。また先日は大きな夕日が山肌の雪に反射して、剱岳や大日岳を茜色に染めた。そしてその茜色が刻々と夕闇の色に移っていくのを飽くことなく眺め続けることができた。
こればかりではない。思わぬ楽しみも加わった。野鳥たちが窓辺の榊の実を啄みに来るのだが、厨の窓はミラーガラス。鳥たちには私が見えないが、私は心置きなく鳥たちを見ることができる。先日は花鶏(あとり)が来て、喉の奥まで見せて鳴いてくれた。厨の窓は、私の期待以上に、私に喜びをもたらしてくれた。
さて、2月の句会だが、立春の後、春の雪とは思えぬ大雪が降ったからだろう、冬野、雪、雪卸、焼芋、寒波、除雪車、雪掻などの冬の季語の句が半数を占めたが、二月、建国記念の日、雪解、雪崩、猫柳などの早春を詠んだ句も出句され、明るい句会となった。
投句のあった季語に合わせて『前田普羅 季語別句集』より3句。
雪卸し能登見ゆるまで上りけり
苔つけし松横たはる二月かな
国二つ呼びかひ落す雪崩かな
康裕