主宰近詠(令和5年6月号)

留 守 番 ラ ジ オ

中坪 達哉

ユトリロの街にも春の雨降るや
朝刊を大きくひらき囀れり
囀の少なき朝や歩を延ばす
蛇穴を出づ山城の三の丸
よろづ屋の留守番ラジオ春の昼
 福光美術館ワークショップ 五句
囀の波打てばその真下へと
四層の切り岸あふぎ春うれひ
流れ行く雲の匂ひも春の風
この丘に幾たび立つか緑吸ふ
あたたかや万葉仮名を目でなぞり