主宰近詠(令和4年9月号)

定 家 葛

中坪 達哉

一語待つ定家葛の花仰ぎ
蛇けふも頭隠して径ふさぐ
十薬を根こそぎといふ屈みやう
大声が風に乗り来る熱帯夜
いにしへの風は如何にと古扇
  車庫を燕に明け渡す
自転車の乗り降り燕の子が匂ふ
冷房やマイクロフォンの己が声
香水の強さも嫉妬ありありと
かたはらにいつ並びしや白鷺は
谷よりの風に草笛思ふまま