辛夷草紙<37>(令和4年8月)

<草紙37>「 蝉も熱中症か 」(富南辛夷句会便り) 

 例年8月は、みんみん蝉や法師蝉が声を限りにあちこちで鳴いていた。今年はどうだ。夕方に時折、蝉の声を聞いたが、まったく弱々しい。お盆に遊びにくる子供達のために揃えておいた捕虫網の出番もなかった。句作でも「蝉時雨」という季語を使わないで終わってしまった。新聞によれば、「セミも熱中症のようになって死んでしまうことがある」とのこと。そう言えば、汗を拭きつつ庭の木陰で休んでいた私にぶつかってきた蝉は、地に落ちて、それきり動かなかった。きっと熱中症だったのだろう。ちなみに、富山市の今年の最高気温37.5℃となった8/11のことだった。

 さて、投句の季語は、夕立(スコール)、夏の雲、熱帯夜、金魚、心太、団扇、月見草、墓参(掃苔)、朝顔、虫の音など。その中で、墓掃除に熊避けの鈴を付けて行く句があり、山里の暮らしの様子が窺えた。また、スコールを季語とした句があった。スコールが去り、畑の様子を見に行くと、西瓜がいくつも、棒で叩かれたように裂けていた。仲間の畑も同じだったとのことだ。これは、旱の後の大雨で、水をたくさん吸い上げた果肉が急激に肥大し、果皮がそれに追いつけずに裂けたというのが理由らしい。さて、これを俳人の詩心がどう詠みこんだか、俳誌『辛夷』での発表を楽しみにしていただきたい。

 投句のあった季語に合わせて前田普羅の句を二句。

  月見草萎れし門に帰省せり   (普羅句集所収)

  虫来ぬと合点して居る読書かな (普羅句集所収)

康裕