主宰近詠(令和4年7月号)

春 の 雨

中坪 達哉

頭上へと来るまで燕眺めをり
歩めとぞ肩先掠めゆく燕
乗り降りの雨に濡るるも四月かな
ペダル漕ぐ合羽を滑る春の雨
  定家自筆漢文体
春時雨漢字犇犇明月記
  佐竹本三十六歌仙 源重之
麗かや金泥も緑青も失せ
音も無く捲る古文書春深し
亡き父の湯呑み馴染みて新茶かな
あの蜥蜴昼からは塀の上をゆく
裏道の果して風の涼しさよ