辛夷草紙<35>(令和4年6月)

<草紙35>「 主宰の教え『生活そのものが俳句』」(富南辛夷句会便り) 

 「富南辛夷句会の皆さんとお会いするのは、1年ぶりですが、ここに来るまでに出会った入道雲、栗の花が印象的でした。」と中坪主宰の挨拶をいただいて、句会が始まった。久しぶりに句会員が全員揃い、その投句全句に渡り、主宰から指導を受けた。主宰から「一日の生活そのものが俳句で、その一コマを切り取れば良い。俳句を作ろうと思って、構えると抽象的な言葉になってしまい、読み手には思いが伝わらなくなってしまうこと」、また「珍しいもの、綺麗なものを見ると、つい説明したくなり、季語の説明に終わってしまうこと」などの注意すべきポイントを教わった。
 さて、投句の季語は、雪形、夏近し、蝮、昼寝覚、明易し、蛙、風薫る、汗、草むしりなど。中でも、裏山に入るのが日課めいた方の銀竜草、金蘭、青山椒の句や、登山が好きな方の牛嶽、山毛欅若葉を詠んだ句は、野趣溢れる句で印象的だった。

 投句のあった季語に合わせて前田普羅の句を一句。

  啼き立てて暁近き蛙かな (『普羅句集下巻』 所収)

康裕