主宰近詠(令和4年6月号)

春 の 土 手  

中坪 達哉

投函へ渡る大路も春めきぬ
時計無き柱となりて冴返る
古傘に音も弾みて木の芽雨
剪定のどれも錆びたる道具かな
おのづから上り下りして春の土手
  富山県中央植物園 二句
人なくば駆けたきものを花の道
めまひして花の精でも出でたるや
放心の我に手を振る花見船
存分に土の匂ひも山桜
  恩師長逝
温もれる教科書ひらく花満ちて