主宰近詠(令和3年3月号)

 活 字 整 然 と

中坪 達哉

冬至湯を上がればぼんぼん時計鳴る
この冷気好もし雪の降る町を
寒波来る夜更けや活字整然と
餅を切る一直線の深さかな
除夜の湯の音ほどは波立たぬなり
元日も夕べや重き雪を搔く
覚えなき筆跡無名年賀状
小面の鼻より老いて初座敷
   机の向かひに
小寒や雪に目を出す陶蛙
珈琲かをる窓辺や雪崩注意報