主宰近詠(令和5年12月号)

小 望 月

中坪 達哉

校舎なき一本道や秋ざくら
掛稲の香りといふを存分に
端座して添水の音も和らぎぬ
土に座す臀も痩せたり運動会
   風は嵩にかかって
秋爽の風押し寄する天守かな
明日の晴すでに始まり小望月
高々と網張る蜘蛛や今日の月
積み直しては書をひらく雨月かな
夢でありしか月光にひた濡れて
明日へのメモを幾つかすがれ虫