主宰近詠(令和5年5月号)

花 冷

中坪 達哉

とりあへず背伸びなどして春の風
窓満たす銀嶺雪崩注意報
春いよよ膝の回復遅々として
 氷見の家にて月参り
ふるさとの先づ春潮の見ゆる丘
校舎無き一本道や春の雲
中庭へ声を散らして燕来る
白梅に来てゐるといふ目白見ず
鳥どちと目の合ふことも花あふぐ
木洩れ日に囀を聞き直しては
 中西進先生をお見送り。高志の国文学館にて。
花冷の冷きはまりし大気かな