主宰近詠(令和6年6月号)

春 北 斗

中坪 達哉

菜の花の見えて匂へるところまで
ぎふてふのよぎりてよりの脚かろし
今日つばめ見て居らざれば表へと
ぎうぎうと田起しの泥朝日吸ふ
近道をして来し肩に桜蕊
公園の芽柳に触れ折り返す
終バスを降り春星のただ中へ
靴音の若返り行く春北斗
裏山の匂ひ押し寄せ春の闇
揚ひばり父母なき里をしばし歩す