前田普羅<42>(2024年4月)
< 普羅42 前田普羅の地貌句「能登恋い」① >
普羅は、能登の自然や人々をこよなく愛していました。今回から、その普羅の句を、主宰中坪達哉の著書『前田普羅 その求道の詩魂』より紹介します。
(抜粋p96) 雪卸し能登見ゆるまで上りけり
近年の地球温暖化現象でめっきり減った「雪卸し(雪下ろし)」だが、普羅の時代はそうではない。北陸の雪は水気が多くて重い。家を潰されないように、二階部分の大屋根の天辺にまで上がって雪を下ろさねばならない。命がけの作業である。「能登見ゆるまで」に能登を恋う普羅の心情がうかがえる。
能登を詠んだ作品は、昭和25年に刊行された『能登蒼し』に収録されている。同句集は普羅自身が著した最後の句集で、『春寒浅間山』『飛騨紬』と並んで国別三部作をなす。国別三部作は、普羅のいわゆる地貌論、すなわち地形や気候が異なれば植物も異なるように歴史、風土も異なり、そこでの人生も自ずと異なるから、それに適った句を作らねばならない、との考えにもとづくものである。
(普羅14にも主宰の鑑賞があります)