主宰近詠(令和6年2月号)

雪 の 浅 間

中坪 達哉

茶室へと紅葉に濡れし身を入るる
秋草の匂ふ自転車起しけり
綿虫を煽りて先を急ぎけり
故郷の新道に迷ふ片時雨
水鳥のかたまるほどの数もなく
  逞しきにょしょう
振り返る雪の浅間に背を押され
たどり着き歯茎に寒さ沸き上がる
ピラカンサその実を食べる鳥を見ず
深呼吸吹雪帰りの玄関に
極月の日付変はりてスロージャズ