主宰近詠(令和5年9月号)

花 擬 宝 珠

中坪 達哉

裏参り果して蛇のよぎりけり
立飲みのラムネや玉を鳴らしたく
瓜食むや稜線を目でなぞりつつ
雨脚も四周の支へ花擬宝珠
わが胸にもたるるもよし花擬宝珠
  幾日も続く
障子打つ羽蟻の音に目覚めけり
雨音の方へ寝返り夏負けて
天守へと登るか梅雨も明けたれば
かの窓も聞き入ることか夜の蝉
一鳥の飛び行く月の涼しさに