主宰近詠(令和5年4月号)

冴 返 る

中坪 達哉

寒波来る匂ひにバスを待ちにけり
持ち替へて重たきは本歩道凍つ
映し合ひ氷柱は丈を伸ばしけり
古鍬の割り行く雪の響きかな
  有磯海
気嵐に煽られペダル強く踏む
街中を出でて探梅ごころかな
春寒し道に迷ひし夢覚めて
  わが誕生日
目な交ひに雪の立山冴返る
冴返る般若の面の白黄金
春子干す祖父の匂ひといふものを