主宰近詠(令和5年1月号)

鰤 起 し

中坪 達哉

座す膝に日差しあつめて秋の昼
柿食ふや渋み幾らかうべなひて
酔芙蓉の酔ひ遅き日の無聊かな
歩かねば野も余所余所し雁渡し
野に入ればやがて花野となりにけり
  氷見の家 三句
ストーブを出すや父母在るごとく
  庭の草刈り追ひ付かず
丈六の芒となりて風を呼ぶ
旧道を通らずじまひ鰤起し
  高岡辛夷吟行会 大仏、古城公園 二句
一枚の落葉が誘ふ願ひ道
舟繋ぐ落葉溜りの真下かな