主宰近詠(令和4年10月号)

青 嶺

中坪 達哉

胸中に先づ涼しさといふものを
滝音に高巻きの背の見え隠れ
文机に加勢や夜々の蝉時雨
悔い多きこの頃なれど月涼し
  普羅忌 二句
大空に目で書く一句立秋忌
木斛の花後の木蔭を頼みけり
どの葉へと移さん手に乗るかまきりを
寝返りて真横に来たる盆の月
文机へ雨にも負けぬ虫の声
  岳父の百五歳を祝す
雨降るも晴るるも糧と青嶺かな