主宰近詠(令和4年8月号)

浦 島 草

中坪 達哉

妻の背の早も遠きや蕨狩
立山の見えぬ日残る鴨探す
残る鴨見当たらず水余所余所し
筍を掘るや谷より風強し
筍を掘る一撃の谺かな
   山中に時折
この辺り隠し田跡か浦島草
屈み居れば太き蚯蚓が集まり来
青嵐打ち合ふ竹刀二百本
夕焼けて歩き足らざる歩を伸ばす
ペン皿に乗りしペン立て夜の涼し