主宰近詠(令和4年5月号)

鳥 来 ぬ か  

中坪 達哉

寒気凝る座敷に碁盤将棋盤
鰤食うて鈍感力といふ力
ドローンの影が撫で行く雪の原
春めくや有るほどの髪刈りに出て
   なるべく車に乗らず
料峭のペダル漕ぎ出す登り坂
暖かや濡れては乾く鞄提げ
春愁を払はん一歩おもむろに
鳥来ぬか河津桜を真下より
庭に立つすなはち燕待つこころ
青き踏む腰で歩めと高低差