主宰近詠(令和3年8月号)

 朴 の 花

中坪 達哉

植ゑ終へし田の匂ふなり夕厨
衣更へ散歩の距離も延ばしけり
夏帽子被り直して踏み出しぬ
雲目掛け走り出したる夏野かな
ペダル折らんばかりに上る雲の峰
  車庫に巣づくり
一台分空けて今日より燕小屋
黄楊の木が一番今年の蜘蛛の糸
  氷見の実家 二句
窓開けて蛇口をひねりあいの風
前は毟り奥は刈りたる草の庭
  有峰
急登の目な交ひ朴の花眩し