辛夷草紙<73>(令和7年6月)

<草紙73> 「中坪達哉主宰を迎えて」(富南辛夷句会便り)

 北陸地方は6月10日梅雨入りとなり、警報級の大雨となった日もあったが、主宰は、「晴れ男」らしく、今日の17日はよく晴れて夏雲が眩しいほどだ。

 今月の投句では、夏の里山の花や草、生きもの、天文など多彩な季語が並んだ。主宰はそれらの句の背景を聞きながら、作者が思いを止めなかった句作のポイントを拾いあげて丁寧に添削をしてくださった。

 特に主宰は、里山地域の暮らしぶりが詠まれていること、さらに、その暮らしの中で、川底のヤゴや、蜥蜴の尾など、珍しい季語や事柄を積極的に詠んでいることを評価してくださった。そしてこれからも、このような暮らしに根差した句を詠むよう心掛けてほしいと話された。

 また、作句の留意点として、

①珍しいものだからと、観察したものを全部詠み込むと説明になること。

②口語調の言葉を使った句が見受けられたが、辛夷俳句では、文語・旧仮名遣いの表記が詩の言葉として相応しいと考えていること。

③五七五の語順を入れ替えてみて、調べを口に出して整えること。

などを挙げられた。

 こうして皆の一人一人が、自分の句の良いところ、工夫するところ、作句の視点などの「今日の句会のお土産」をいただいて、次回の主宰との句会を楽しみにしているようであった。

 投句のあった季語に合わせて『前田普羅 季語別句集』より3句。

  裸子のかくるるばかり二番蕗 

  野茨に鼻つき出しぬ近江牛  

  日もすがら木を伐る響梅雨の山

康裕