主宰近詠(令和4年11月号)

大 気 の 音 

中坪 達哉

待宵を駅頭の灯は逆立ちて
戻る距離思ひて歩む今日の月
十六夜を灯さぬ窓は月見るか
別れ来て立待月を車窓より
居待月天心に読み耽りゐて
開け放つ風に目覚めて寝待月
流れ行く大気の音か二十日月
  氷見の家
尻餅も慣れて茅萱を引きにけり
新涼の畳を進み有磯海
虫籠の中とでも云はんわが机辺