辛夷草紙<66>(令和6年12月)
<草紙66>「 千古の家 」(富南辛夷句会便り)
先日、本ホームページ「四季だより」の「冬日差し(千古の家)」が目にとまり、とても懐かしい思いが込み上げた。私は40代のころ福井県松岡町(現永平寺町松岡)にある大学に赴任し、附属病院の増築に取り組んでいたので、遠方から建築関係の来客があると良くこの「千古の家」に案内していたからだ。
「千古の家」は中世末期より現存している貴重な古民家で、国指定重要文化財となっている。とりわけ建築に携わる者にとって、豪雪地帯特有の股柱や桁、丸みを帯びた茅葺屋根などは興味深いものであった。また、裏山を借景にした庭では季節ごとに枝垂れ桜、花菖蒲、紅葉が美しい。さらにまた、いつも火をくべている囲炉裏、地元産そば粉の手打ちそばのもてなしもあり、心が和む家だった。
さて、今年最後となった句会の季語だが、自然薯、銀杏(ぎんなん)、南天の実、鵙などの季語で秋の名残の句もあったが、いよいよ冬本番を迎え、落葉、報恩講、ストーブ、枯木、山眠る、雪、古暦、年用意などの冬の季語が多かった。
投句のあった季語に合わせて『前田普羅 季語別句集』より3句。
枯れまじるにはとこ太き垣根かな
四五日を残して已に古暦
夕日こそ恋しかりけり年用意
康裕
※「千古の家」HPへ