辛夷草紙<43>(令和5年1月)
<草紙43>「初スキー」(富南辛夷句会便り)
年末年始に帰省する子供一家の正月行事の目玉はスキーだ。今年も車で30分程度の立山山麓スキー場の一つ、極楽坂スキー場へ向かった。
このスキー場の醍醐味は何と言っても、冬晴れの山頂からの眺めだ。富山平野と富山湾を一望する景は雄大だ。その景に向かって一気に滑り降りる。爽快そのものだ。が、今年私は数え80才となり、大事をとって比較的斜度のゆるい林を抜けるコースを選んだ。家族の若い者たちは、好みのコブや斜面へ向かってスキーを蹴り出して行った。私は残念で少し悔しかったが、青空と雪を被った木立の美しさを味わいながら、休み休み滑るのもよいものだと思うことができた。
思い出の句 湾めがけ孫と飛び出す初スキー
今年の句 初スキー転べば孫ら駆けつけて
さて、今月の投句の季語は、お正月、初春、初詣、宝船、初日記、日記買ふ、年賀状、雑煮、節料理などの新年の季語が多く、続いて、寒九、寒波、寒餅などの寒に関わる季語が多かった。句材として「霊峰」、「立山より流るる水」、「立山茜」と立山を詠み込んだ句が数句あった。立山がいつも崇められ、暮らしに溶けこんでいる句が多いのは富南辛夷句会の特徴の一つと言えよう。
投句のあった季語に合わせて『前田普羅 季語別句集』より3句。
大雪となりて今日よりお正月
寒餅をならべし部屋に予習の子
雪の夜や家をあふるる童声
康裕