前田普羅<21>(2022年7月)

< 普羅21 前田普羅の自然詠③ >

 今回は、奥能登の「地貌」の句を、主宰中坪達哉の著書『前田普羅 その求道の詩魂』より紹介します。

(抜粋p98) 奥能登や浦々かけて梅雨の瀧

 平成15年7月の能登空港の開港で奥能登も近くなった。羽田空港から1時間5分、それより車で25分で輪島へ、半島最先端の珠洲まで45分で着く。普羅の時代は富山からでも片道1泊を要する奥能登の地であった。
 「奥能登や」の詠嘆は、憧れの地の奥能登に来た喜びと目の当たりにする風光に感動してのことだろう。「浦々かけて」とは、普羅が晩年の弟子の福永鳴風に語ったところによれば、輪島から珠洲の狼煙岬にかけては細い道の海岸線であったと言う。「梅雨の瀧」は、梅雨時の滝の意味ではなく、海岸線を走る普段は滝などない丘陵に梅雨の集中豪雨がもたらした俄作りの滝である。能登の地貌の一端を見据えた一句といえよう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です