主宰近詠(令和3年11月号)

 穴 ま ど ひ 

中坪 達哉

ひあふぎの庭へ下りよと今日も咲く
透き通る声変はらずに生身魂
雀らが潜るや芙蓉の花盛り
追分の旧字のしるべ鳥兜
独りには独りの深さ森の秋
   岐阜城
秋風の匂ふ天守でありにけり
磐石の庭も古りたり穴まどひ
穴まどひ消えたる門と人知らず
まだ通草食べてをらねば秋ならず
秋雨の湿りを膝に端座かな