主宰近詠(令和3年7月号)

 草 刈 る や

中坪 達哉

春眠といふこと知らず文机に
はぐれたか窓辺離れぬ雀の子
窓若葉鋏を二つ使ひ分け
大いなる玉葱きざむ音なりし
クリップも錆びたる書類夕薄暑
  氷見の生家へ
草刈るや錆びたる鎌を励まして
種蒔を終へし右手のほてりたる
だれかれの居らぬ雲雀野しばし歩す
絶え絶えの道今もなほ姫うつぎ
空堀か杉の落葉と滑り落つ