主宰近詠(令和3年6月号)

 鳶 の 下

中坪 達哉

早立ちにめくる新聞黄水仙
廃村にあらず畑打つ鳶の下
初ざくら頭上に鳶を近くして
通ひ路をいそぐ撫で肩花ぐもり

  素人の遊び
剪定の伝ひ歩きや塀の上
囀のその正体が塀に来て
春うれひも篩にかけて払ひたし
利休忌と聞けば心も定まりて
靴音を待つ春灯の石畳
返信をしたたむ花に嵐の夜