辛夷草紙<25>(令和3年12月)
<草紙25> 「冬代田に雪の立山」(富南辛夷句会便り)
2年ほど前から、句会拠点の上滝公民館の周辺で11月から12月にかけて代掻きをする田んぼが大幅に増えた。時には、霙ふる中での代掻きも。聞くところによれば、冬期に代掻きし、しばらく湛水の後、水を落とし、来春に直播きするとのこと。「乾田直播農法」の一環という。従来の農作業を大きく変え、そこに住む村人の季節感をも変えるものだ。
その代田に雪の立山を見た。さて、一句をと思うが、季語をどうするか。農作業が変わりゆく時、新しい季語も現れてくるのだろう。
立山の映り全し冬代田 康裕
さて、句会だが、ようやく普段の句会に戻ってきたように思う。句材は、秋夕焼、秋の声、秋祭、茸飯、行く秋、冬支度、報恩講、冬の虹、山茶花、七五三などで、コロナ禍で家籠りや近くを散策する句が多かった。今回は、①季語の説明になっていないか、②報告になっていないか、③一般概論になっていないか、④作者が見えるか、を普段より意識して句会を進行。作者の推敲に参考となる意見や言葉がいつにも増して次々と出され、活発に句会を楽しんだ。
投句のあった季語に合わせて前田普羅の句を一句。
椎の木を離れてはげし秋の声(前田普羅 昭和21年作)
康裕