辛夷草紙<17>(令和3年6月)
<草紙17>踏切(富南辛夷句会便り)
6月の句会では、万緑、クレマチス、青嶺、鴨足草(ゆきのした)、白靴、髪洗ふ、山椒魚、笹百合、青野原、実桜、青胡桃、草むしり、麦秋などの多彩な「夏」が溢れていた。それぞれの句から日々の生活の身近なところに「夏」があることがわかる。富山では、四季の中でも夏が一番、自然の中で活き活きと活動している感が強い。
さてその富山の「初夏」を、先日NHKのBS番組「こころ旅」が走り抜けていった。舞台は、我が句会の活動地域。5月下旬、代田の横を流れる水の音が心地よく響き、その中を火野正平さんが手紙に書かれた依頼を果たすべく自転車を走らせた。出発は、富山市本宮(常願寺川上流の集落)にある立山線の踏切付近。ここから常願寺川左岸沿いに下り、横江頭首工堰堤を渡り、右岸の立山町へ。そしてさらに線路に沿うように旧道を下り、目的地「釜ヶ淵駅近くの踏切」へ。ここで通過列車に「手を振る」のが手紙の依頼。運転手さんが気づくかどうか心配だったが、火野正平さんが手を振ると運転手さんも手を振り返し、依頼者の願いが叶って嬉しかった。遠い子供の頃に、通り過ぎる電車に向かって手を振っていた思い出を持つ人も多いだろう。
最後の場面「釜ヶ淵駅近くの踏切」を後日訪れたが、三本の道が集まっていた。私の家の近くにも踏切が交差点となっているところがある。「踏切」は車や人が集まり、立ち止まり、別れるところだ。
麦秋や踏切越せば道分かれ 康裕
ちなみに火野正平さんが走ったこのルートには、常願寺川の流れと大日岳を同時に一望できる撮影スポットがあり、絶景。辛夷社ホームページの「トップページ」や「四季だより」を飾っている。
康裕