主宰近詠(令和3年1月号)

時 雨 虹

中坪 達哉

嗅ぎ分けて金木犀と銀木犀
銀杏を拾ふことなき歩みかな
新道に迷ふふるさと柿日和
さつまいも眺め飽かねどふかしけり
卓上の柚子を一と嗅ぎ出掛けるか
  時雨好もし
再会に選ぶ言葉や時雨虹
大仏の時雨明かりを行き帰り
冬晴や帽子の鍔が仕切る空
何を知らす猿の声かや木の葉雨
日に匂ひ半日山と積む落葉