辛夷草紙<62>(令和6年7月)

<草紙62>「常願寺川砂防施設 本宮堰堤 」(富南辛夷句会便り)

 日本一の暴れ川と呼ばれる常願寺川の中流には段差がいくつか作られ、川幅一杯に滝のようになっているところがある。それらは富山平野に入る手前で土砂をせきとめている砂防堰堤だ。特に川上に位置する本宮堰堤は高さ22m、幅107mの大きな堰堤で、せきとめられた土砂の量は我が国最大級を誇り、上空から見下ろせば大きな川原を作っていることがわかる。平生の堰堤は、きらきらと光りながら落ちる「白糸の滝」のようである。堰堤下の川原に遊ぶこともでき、夏は川風が心地よい。

 だが荒梅雨ともなれば濁流が滝となって轟く。流れ落ちると言うよりは、濁流を吐く、爆発させているというのがふさわしい。そして土の匂いを放つ。この様子を詠んだ「辛夷」の先達がいる。この堰堤近くに住まわれていた中川岩魚さんである。

  山町を覆う土の香梅雨出水  岩魚 (『岩魚句集』に所収。)

 さて、句会だが、山開き、夕立、夕焼、茄子、胡瓜、金魚、夏至、立葵、紫陽花、熱帯夜、梅雨晴間、片陰など、夏本番だ。

 投句のあった季語に合わせて『前田普羅 季語別句集』より3句。

  夕立のにごり一すぢ神通峡

  苗売に日蔭をのこすアスファルト

  金魚居てしづかに病いゆるかな

                       康裕