辛夷草紙<48>(令和5年6月)

<草紙48>「身近な草花を調べ、詠む」(富南辛夷句会便り)

  私は、NHKの朝ドラ「らんまん」の主人公槙野万太郎の植物へのひたむきさに元気をもらい、名前を知らない庭の草花を調べることにした。その手始めに庭に咲いていた花の写真を撮り、調べ方を草花に明るい友人に聞いた。するとスマホの植物図鑑アプリで検索してくれて「銀盃草」であることが分かった。父母から名前を聞いていたようにも思うが、すっかり忘れていた。というより、毎年咲いていても少しも気にも留めていなかったのだ。万太郎のように、どんな草花にも心を寄せる自分でありたいと反省し、花たちに申し訳ない気持ちになった。「銀盃草」は夏の季語。庭に這うように広がっている葉の緑の中に、清楚な白い花が、涼しさを漂わせている。

 私には、もう一つ決めたことがある。名前が分かった草花を俳句に詠むことだ。早速「銀盃草」の一句。

   銀盃草あめ玉くばる母のゐて(回想)  ※銀盃草の写真は、「四季だより・夏」掲載

 さて、今月の投句の季語は、麦の秋、梅雨、青田風、短夜、夏の雨、結葉、山毛欅若葉、青山椒、銀盃草、金魚、百足、蛍、蟻、閑古鳥、ビール、梅酒などで、すっかり夏だ。句会では、歳時記に例句の少ない季語に挑戦する流れが生まれている。今月は「結葉(むすびば)」、「銀盃草」だ。

 投句のあった季語に合わせて『前田普羅 季語別句集』より3句。

  佐渡人の菜種油(なたね)の灯かや夏の雨

  海鳴つて蛍は草に沈みけり

  閑古鳥昨日の楡に来て居たり

※梅雨の句は、「前田普羅のページ・普羅33」掲載

康裕