辛夷草紙<29>(令和4年2月)
<草紙29> 「大きな水車」(富南辛夷句会便り)
富山地方鉄道上滝線の大川寺駅近く、常西水神社の隣に大きな水車がある。常西合口用水のこの周辺は、四季折々に美しい。水車の羽根の色合いも、用水の護岸の石積みも、設計者の心配りにより、しっとりとした景観となっている。青空にほとばしる水の煌めきは見飽きることもなく、とりわけ満開の桜と北アルプスからの轟轟たる雪解水の組み合わせは格別だ。俳人の方々には、ぜひ詠みに来ていただきたいと思う。
また、この大きな水車はドイツ製で、小水力発電用として設置されたが、二酸化炭素削減のためのクリーンエネルギーとして環境学習に活用されている。そのため、迫力ある水車の全姿が露出し、その動きを観察できるようになっている。
さて、2月の句会(2/25)だが、雪搔、凍、日脚伸ぶ、除雪車、マスクなどの冬の季語と、白梅、春寒、春暁、春一番、春浅し、春泥、春の雪などの春の季語が混在していた。印象的だったのは、牛のお産の句。夜通し鳴きやまぬ雌牛、春の暁に産まれ、よろけつつも踏ん張り立ち、乳頭に吸いつく子牛など、この地区ならではの暮らしの句だった。また、コロナ禍のため、周辺に配慮して欠席される方がいた。早く収束してほしいものである。
投句のあった季語に合わせて前田普羅の句を一句。
春雪のつもりてぬらす松のこぶ
康裕