主宰近詠(令和8年1月号)

瞿麦忌(なでしこ忌 大伴家持の忌日)

中坪 達哉

秋風を滑り台とし雀らは
鴉らよ背高泡立草を食ひ千切れ
離れへといぬほほづきのまた増えて
瞿麦忌の筆持てば手の動き出す
柿三つ四つ食前食とでも言はむ
通草食ふ山の雨風思ひつつ
スーパームーン見送りチューリップ球根植う
パソコンに向かへば残る虫のこゑ
冬めくは納屋の引戸の音からも
本能寺跡は建て込み初時雨