主宰近詠(令和6年8月号)

五 月 闇 

中坪 達哉

駅ピアノ誰か鳴らせよ春惜しむ
父母亡くて蛙の声に寝落ちけり
雨脚の白きをはじき夏つばめ
われと知り口をへの字につばめの子
真直なる雨脚涼し天守閣
 雨に打たるるもよし
五月雨の匂へる合羽吊りにけり
玉葱の皮剝くいつまでも若く
まなじりに哀しみの色えごの花
うすうすと浮かぶ般若や五月闇
花栗の盛りの家と知らで来し