主宰近詠(令和4年2月号)

 冬 薔 薇

中坪 達哉

枯枝を打つや擦り傷幾らかは
枝打の仕舞の一打響きけり
寒波まだ遠し日溜りに長居して
見るほどに月光仮面頰被
目を凝らす闇に冬薔薇浮かぶまで
   その音を聞きたく
舗道打つ音や縄とび二重跳び
冬菊の全き黄もて朝日浴ぶ
落ちさうな机上の山や十二月
仮置きの書物崩るる冬座敷
来る年の幸多かれと餅を切る