辛夷草紙<14>(令和3年5月)

<草紙14>新緑の里山(富南辛夷句会便り)

 この時期の富山は、残雪の白、杉の深緑、雑木の薄緑と、コントラストが絶妙だ。畑に出ても、立山・剱岳・大日岳などの残雪と里山の澄みきった新緑が、私に畝作りを中断させる。私は、いそいそと「辛夷社のホームページ用に」と、お気に入りの撮影スポット(富山市・南上野)へ出かけてしまうのだ。

 さて、句会だが、コロナ対策用に開けた窓からの風が心地良い。会員の生活エリアは、立山山麓、常願寺川や熊野川の扇頂部、富山旧市内などと多彩なだけに、句材は木の芽、早蕨、残雪、山躑躅、堅香子、花、入学、春塵、春炉など、「春」があふれていた。この句会は、かねてより作句背景や感想を述べ合うことを大切にしていて、会員の暮しや生活エリアの独特な情景を聞くことができる。同じ富山なのに知らないことがあって楽しい。また、今回は「夫戻る」か「夫帰る」かの「言葉選び」で、それぞれの受け止め方の違いが見られて印象的だった。熱中のあまり、時間が長引くことがしばしば。次回の句会からは事前投句を採用し、清記時間を省くなどの工夫をしてみることになった。 

早蕨を五本にぎりて夫帰る 優子

 康裕