主宰近詠(令和3年12月号)

 野 の 錦  

中坪 達哉

疲れにも似たる安らぎ雁の頃
今日あたりと見遣れば塀に尉鶲
立山よりの秋風羊羹厚く切り
登り下り慣れたる脚に威銃
 とある寺院
花頭窓へと押し寄せて野の錦
 編集委員昼食後の散策
秋雨を何の屯か五六人
木刀の素振り正面鵙の贄
何の音と定め難しや十三夜
枯れ尽くす楽しみあるやゑのこ草
数寄屋門引手に縋る冬の蜂