辛夷草紙<61>(令和6年6月)

<草紙61>「『辛夷』創刊百周年記念特集号の反響 」(富南辛夷句会便り)

 6月の句会は、『辛夷』創刊百周年記念大会を終えてなお、心にその余韻が残る中で、中坪主宰をお迎えしての句会となった。主宰は、感謝の言葉に続けて、「記念特集号は、同人・誌友の方々だけでなく、報道機関、他結社の方々、そして物故会員のお孫さんからも購入いただき、その反響の大きさに改めて嬉しく思いました。また、皆さんから、辛夷社百年の略年表は俳句文芸史とも言えること、30年以上継続して出句された23名のプラチナ会員の方々の写真や句に「継続は力なり」ということを実感したこと、在りし日の祖母の写真や句を見て懐かしく思ったことなどの感想を数多くいただき、心打たれるものがありました」と、お話をしてくださった。

 さらに、作句の心がけとして、①上手い句を作ろうと思わないこと、②自分の美意識・価値観を信じて詠んでほしいこと、③日常の暮らし、仕事、趣味などの自分の身辺足下を詠んでほしいこと、と3つの大事なことをお話くださった。

  句会では、更衣、豌豆、苺、柿若葉、夏落葉、軒忍、蟻、風薫る、紫陽花、祭、短夜、などの夏の季語の句が並んだ。主宰はこれらの全句を一つ一つ丁寧に添削指導してくださり、感動に満ちた充実した句会となった。

 投句のあった季語に合わせて『前田普羅 季語別句集』より3句。

  月出でんとす花豌豆の匂ひけり

  豊なる堆肥にゆるる祭の灯

  豪雨うつて去りたる柿の若葉かな

康裕