主宰近詠(令和6年11月号)

狭 庭 の 月 

中坪 達哉

ペーパーナイフ切り裂く音も夜の秋
わが机辺けふも遅参の鉦叩
虫時雨けふは早めの仕舞風呂
  氷見の実家
灯らざる庇より降る虫のこゑ
待宵の木々それぞれに匂ひ立つ
たたずめる我が影正す良夜かな
  高志の国文学館 観月の集い
巡り来て狭庭の月となりにけり
投函へいざよふ月も見ゆるころ
大河いま立待月を上げにけり
圓生の百川聞いて居待月